2ntブログ

大人のための時代小説

Home > スポンサー広告 > スポンサーサイトHome > HOME: 目次があります > 初仕事其の拾四 再び夜盗の家

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 初仕事其の拾四 再び夜盗の家

「おりん、よくやったな」
「うん、でも盗人が飛び込んできたときはどうなるかと思った。
せっかくどっかに行った用心棒があれからは毎晩見張っているし。」
親方の佐七に褒められ、おりんは久しぶりに屈託のない顔で笑った。
弥右衛門の屋敷にいたころのそっけない髪型や粗末な着物も着替え
頬にほどこしていた詰め物もとったおりんはもう、『おみつ』の形跡はない。

「聞かれてるから余計やる気出したんじゃねぇか?」
「そんなわけないわ。仕事だと思って我慢したもん」
おりんは若い娘らしく口を尖らす。
「親方はあの侍と遣り合ったのでしょ?」
「まぁな。まともにやったら勝ち目はねぇよ。
でも暗闇の中じゃこちらに分がある。」
「今頃お役人が血眼で親方を捜しているんじゃないの?」
「それはねぇよ。ありゃぁ上納金をごまかして溜め込んだ小判だ。
調べられりゃ、足がつくのはてめえだからよ」
「へぇえ、じゃあ、盗まれ損?」
「そういうこった。今頃地団太踏んで悔しがっているだろうぜ」
「じゃぁ、誰かを雇って探すんじゃないの?」
「さぁな。ああいう輩はよぉ、他にも貯めこんでいるんだよ。
そっちの守りを固めるほうが先じゃねぇか?」

佐七は夜盗であり、その道では名が知れている。
義賊とまでは言わないが佐七の狙う金は[悪党の隠し金」だ。
つまりお上に言えない金なのだ。
三権分立のない時代、隠し金を知られるのは身の破滅である。
たいていは申し立てなしで終わる。

「そういう金を守るためには、腕の立つ用心棒を雇っているものよ。
用心棒を身近に置くってこたぁそこに何かあるってこった。」
佐七の言葉におりんはふと、あの侍のことを思い浮かべた。
(しくじっちゃったから、首になったのだろうか・・・)

そこに友吉が帰ってきた。
「どうだったい?」
「へぇ、それが、おかしいんで・・・」
「なにがだ?」

友吉は佐七の指示で、その後の弥右衛門の屋敷の様子を聞き込みに行ってきたのだ。
「盗みについては親方の言ったとおり、お上には申し出てないようで」
「そりゃなによりだ。あれだけの雨だ。おそらく奉公人は誰も気づいていないだろう。」
「妙なのは『おみつ』のほうで・・・」
「そっちは申し出たのか?」
「・・・いいや、そうじゃねぇ。申し出てないどころか探してもねぇんで。」
友吉が怪訝そうに答える。
もし、『おみつ』がお尋ね者になっていたらおりんから足がつくかもしれない。
少なくともおりんは屋敷に一月いたので、変装はしていても背格好などで
一番足がつきやすい。居ないとなれば奉公人どもも騒ぎ出すだろう。
佐七はそれを調べに友吉をやったのだった。
「弥右衛門は『おみつ』にたいそう執心だったし、あの夜逃げたとなれば
『おみつ』は手引きした一味ってことくらい見当つけるだろう。
盗人は別にして奉公人が逃げたのは探してもおかしくない」
ああ、なるほど。佐七の言葉におりんは聞き入る。
「両方の意味からも、おれが弥右衛門なら間違いなく『おみつ』をさがす。」
そう聞いてもおりんに不安はなかった。
佐七に全幅の信頼を置いているのと、なにより若くて怖いもの知らずなのだ。

「どうしてなの?」
おりんが友吉に向き直る。
「わからねぇ。あの用心棒もどっかに消えてるし。」
「ふ~ん・・・」
おりんにはあの用心棒になにか鍵があるように思えた。


「なにしろ、よかったじゃねえか、おりん。
お天道様の下を歩けるぞ。
でもしばらくは気をつけろよ。弥右衛門の屋敷には近づくな。」
「はい」
おりんは白い歯を見せて笑った。
あどけない少女の顔だった。
                          
    目次へ
    
    ショートショート艶話へ                        




江戸春画 歌川派七人衆 国貞から国政まで

新品価格
¥2,200から
(2014/4/27 13:44時点)






「他人の奥さんと生でお話しませんか?」国内最大級の人妻専用ライブチャット マダムライブ