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桃太郎 12

こうして桃太郎たちは無事に鬼退治をやり遂げ、捕らえられていた娘たちを救い出すことに成功した。

「だいじょうぶかなぁ」
捕えられていた大勢の女たちを見ながら猿吉がいった。
安堵の色を浮かべつつも女たちはみな、恐怖心が払拭できない様子だった。
「そうね」
桃太郎が女たち一人一人に息を吹きかけた。
「何をしてるの?」
「記憶を消してるの。私にできることはこれくらい。」
「へぇ、そんなことができるんだ」
「うん、自分のできることがなんとなくわかってきたの。猿ちゃんたちが強くなったときみたいに。
神様の力かな・・・
でも記憶を消しても恐怖が消えるかどうかはわからないわ。」
「そういうもんか?」
「後は帰った村しだいね。」
「そうだな、自分たちが差し出した人身御供だからな。責任あるよな。
そこは俺たちがちゃんと言おうぜ。大事にしないようならただじゃおかないからな」
すっかり逞しくなった猿吉たちだった。


「ただいま、おばあさん」
桃太郎は元気に家の戸をあけた。
「桃・・・・ああ・・・無事で。」
おばあさんは泣き崩れた。
「敵は討ったよ」
「うん、うん・・・・いや、お前が無事なほうがうれしいよ。
ごめんね、女の子に鬼退治なんて」
「おばあさん、私は神の使いだから当然のことをしたのよ。
捕えられていた女の子たちの記憶は消したけど・・・
おばあさんは昔鬼のところから一人で逃げてきて、ずっとその記憶を背負ったまま神様に祈ったのでしょう?
つらかったでしょうね。あの日、お団子をもらうまでおばあさんのそんなつらい過去を知らずにいたわ。
おじいさんもおばあさんも本当に優しく私を育ててくれた。
私、おばあさんのことは誰にも話してないからね。」
「鬼退治を祈願したらなぜか女の子を授かって・・・神様のお考えは人間にはわからない。
最初はあんなに鬼退治だけを願っていたのに・・・人というのは勝手だね。
お前を育てているうちにわが子のように思えてしまい、もう敵討ちなんて行かせたくなかった。
・・・・お前に人身御供の白羽の矢が当たるなんてね・・・
やはり運命は変えられない。元はといえば私が願ったんだものね。」
そういうとおばあさんはおいおいと泣き始めた。
「泣かないで、おばあさん。女じゃなきゃ入れなかった、わたしじゃなきゃできなかったの。
鬼退治じゃなく人身御供だとわかったとき私の中で何かが目覚めたの。
長老たちから言われたからじゃなく自分で鬼退治に行こうと思ったのよ。
神様はちゃんとお考えになっているのよ」

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(ということで、いよいよ・・・・というか、やっと完結します)
桃太郎13へ続く