2ntブログ

大人のための時代小説

Home > スポンサー広告 > スポンサーサイトHome > HOME: 目次があります > 初仕事其の三 品定め

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
初仕事其の三 品定め

「旦那様、台所によく見えなさるね。」
「そりゃ、何か気になることがおありなんだよ」
意味ありげに女中たちが話している。
女たちの目線の先にはおりんがいる。
実際、茶がどうの、掃除がどうのと、
丁稚に言えばいいものをわざわざ釜部屋に立ち寄るのは
おりんの品定めに違いなかった。
言葉をかけることはなかったが、弥右衛門は
厳しい顔のまま無遠慮におりんの腰や胸のあたりを
じろじろと見るのだった。
獲物を狙うような古だぬきの視線にも、女たちのひそひそ話にも
気づかぬ素振りでおりんは黙々と働いた。
けなげでおとなしい「おみつ」を演じているのだ。
そうした「おみつ」に向けられた周囲の視線は好奇ばかりではなく同情もあったかもしれない。
しかし彼らとて奉公人である以上どうすることもできないのだ。

その日はまもなくやってきた。
夜も更けて、上弦の月が雲間にかかるころ
女中頭に呼び出された。
「おみつ、旦那様にお茶をお持ちして」
「私が・・・ですか?」
端たの奉公人が主の部屋に茶を出すなど、当時ではありえない。
「そうだよ。旦那様がお前にお茶を出してほしいのだと」
女中頭の声は、仕方がないと諦めた風にも
憐れんでいる風にも聞こえた。
しかし、はっきりと逆らえないのだとわかる
強い口調だった。
今までもこうして若い娘たちが茶を運んだのだろう。

庭を介し渡り廊下があり、
離れにある部屋におりんは向った。
二間続きの奥が弥右衛門の部屋だ。
手前の部屋を背に、一人黒い影が廊下に座っている。
用心棒の侍だった。
近くに寄るまで気配を感じなかったので
おりんは驚いて、足を止めた。
「ああ、先生。結構です。半刻(はんとき)ほど席を外してください。」
おりんに気づいた弥右衛門が侍に声をかけた。
用心棒はゆっくりと立ち上がってどこにともなく去っていく。
部屋の前に用心棒とは物々しいことだ。

「お茶をお持ちしました。」
おりんは奥の部屋に通された。


NEXT




春画の楽しみ方完全ガイド (池田書店の趣味完全ガイドシリーズ)

新品価格
¥1,728から
(2014/4/3 20:14時点)




「他人の奥さんと生でお話しませんか?」国内最大級の人妻専用ライブチャット マダムライブ