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大人のための時代小説

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山の神 其の十

意のままに扱っていると思った相手が、突然己の意志で動き始めたのだ。
しかも、逃げようとしたのではなく、逆に体を引き寄せてきたのだ。
神の口を吸うなど、不埓千万なことではあるが、
その神と情を交わしているのだ。いまさら不埒もくそもあったものではない。
山の神はとっさに身を硬くしたが、抵抗する様子を見せなかった。
敵意がないのを感じとったのだろう。
「ん・・むぅ・・・」
少し甘ったるい声を出して体を緩めた。
夢中で吸った口からは果汁のような唾液が湧いてきた。
繋がっているところがひくひくと脈打っている。
弥太郎は無理に捩ったやわらかい体をいたわるように戻しながらゆっくり唇を離した。
いかに山の神の体が柔らかくとも後ろ抱きにしたまま、まだ弥太郎のぐちなわは山の神の中に納まったままなのだ。
体を起こしての交わりは弥太郎のぐちなわの天晴れさといっていい。
持ち上がった体は木通の裂け目の突端に触れることができた。
経験の浅い弥太郎は、よくはわからないままにゆっくりと其の辺りをかき混ぜてみた。
すると、山の神が今までにないせつなげな声を上げた。
「んん・・・ん・・・うぅううう」
樹液が噴出してきた。
山の神とてこのような交わりは経験ないのかもしれない。
自分の動かした指先に応えたようで、弥太郎は急に山の神を愛おしく感じた。
弥太郎は、山の神の背中にぴったりと張りつき
糸を引くように、首筋、うなじに舌を這わせた。
無骨な手は、精一杯優しく、濡れそぼった木通の口を撫で続けた。
あふれる樹液の中で蕾がぷっくりと膨らんで
指に当たるたびに、びくりびくりと山の神が喘ぎ始める。
繋がって情交を続けてはいるものの、先ほどまでの綽綽然とした様子とは明らかに違って見えた。
まるで、放出寸前の男のそれにも似た切迫感が山の神から感じられるのだ。
「あ・・は・・ぁ・・・あ・・あ・・あ・・」
感極まった山の神の声が静まり返った森に濡れて響き渡る
ぎゅぅぅ・・・
ぐちなわを包んでいる襞がまるで生き物のように弥太郎にきつく絡み付いてくる。
「おお、たまらん・・・」
ここが堪えどころだということは弥太郎にもわかっているのだ。
弥太郎は山の神にぴったりと体をつけたまま
激しく腰を前後に揺すった。
「あ・・・・・あ・・・・あああああぁん!!!・・・・・・」
神にもあるまじき、艶のある声が静まり返った闇に響きわたり
一瞬、木々や、草や、森全体が呼応するようにどくりと波打った。
山の神が気を遣る刹那、
弥太郎もまた、渾身の精を放った。

      其の十一へ続く

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